田中安茂先生指導のもと市川市を拠点に活動している混声合唱団です。
Go, lovely rose

エドモンド・ウォーラーについて

 

Ⅰ.エドモンド(エドマンド)ウォーラー(Edmund Waller)  1606‐1687

イギリスの政治家,詩人。いわゆる王党派詩人の一代表。サカリサSacharissaなる甘美な名前(仮名)の女性にあてた,流麗な恋愛詩で名を馳せたが、ピューリタン革命期間中は国王陣営で暗躍。1643年〈ウォラーの陰謀〉と呼ばれるロンドン奪取計画を立てたが、これに失敗し、逮捕後に同志を売って、悪名を高くした。数年間の国外追放ののち,51年とくに許されて帰国するや、,オリバー・クロムウェルにおもねる詩を書いて保身につとめ、しかも王政復古(1660)後はただちに新国王におもねる詩を書くなど,変節漢の代名詞のような行動があった。

Ⅱ.作品について

Go, lovely rose                                                           さあ行け、かわいいバラ

Edmund Waller 詩 エドマンド・ウォーラー(1606-1687)訳・解説 冨樫 剛(フェリス女学院大学 文学部 英文学科 教員)

Go, lovely Rose!

さあ行け、かわいいバラ!

Tell her that wastes her time and me,

若さを無駄にし、ぼくの気持ちに応えてくれないあ

の子にいうんだ

That now she knows,

こうして、

When I resemble her to thee,

バラである君にたとえたくなるくらい、

How sweet and fair she seems to be.

あの子はきれいですてき、と。

Tell her that's young,

あの子にいうんだ、若くて

And shuns to have her graces spied,

きれいなのに、人に見られることを嫌うあの子に

That hadst thou sprung

バラである君だって、

In deserts, where no men abide,

だれもいない砂漠で咲いてたら、

Thou must have uncommended died.

きれい、なんていわれないまま枯れてしまう、と。

Small is the worth

ほとんど意味がない、

Of beauty from the light retired;

美しくても、光の届かないところにあるものには。

Bid her come forth,

だから、あの子にいうんだ--出てきて、と。

Suffer herself to be desired,

求められるのはいいこと、と。

And not blush so to be admired.

きれいといわれて恥ずかしがってちゃダメ、と。

Then die! that she

そして枯れるんだ、あの子が、

The common fate of all things rare

美しいものすべてに訪れる運命を

May read in thee;

君から学んでくれるように。

How small a part of time they share,

ほんの短い時間しかあたえられていないんだ、

That are so wondrous sweet and fair!

本当に、驚くほど、きれいですてきな人にも、ものにも!

詩の概要

わたしが、「わたしの好きな人のところに行け、そしてこんな風にいってくれ」と、バラにいっている。

わたしは、自分の好きな人にバラを贈ろうとしている。そして、そのバラを通じて、こんなことが伝えられたら、と考えている。というような詩です。誰かに贈りものをするときに書かれてきたタイプの作品です。

訳注:

2 that     関係代名詞の主格。先行詞はher.

3 that     接続詞(・・・・・・ということ)。

3-5         人称: I=わたし/thou=バラ/she=あの子=わたしの好きな人バラがわたしの好きな人にいうことを間接話法で表現。

上の日本語訳は、およその意訳。直接話法で訳すと、次のような感じ。

おわかり?

あなた、あたしにたとえてられてるのよ。

自分がどれくらいきれいですてきか、わかるでしょ?。           (あなた=she/あたし=バラ)

4 resemble           たとえる(OED 2)。

13-15                   構文は、Bid her come/suffer/not blush (=blush not).

「[C]omeするように、sufferするように、そしてblushしないように、あの子にいってやって」。

14 suffer A to B (Bは動詞の原型)             AがBすることを許す、認める(OED 14)。

16 that                 接続詞(・・・・・・するように = so that)

この詩は、いわゆるcarpe diem (= seize the day)という古代ローマ以来のテーマの一変奏です。

この言葉の意味は、「先のことなどわからないから、あれこれ心配せず今を楽しく生きよう」(ホラティウス[古代ローマの詩人])とか「時間はすぐに過ぎ去ってしまうから、いつ死んでしまうかわからないから、今すぐ恋愛しよう」

イギリス文学史の本でほとんどとりあげられませんが、ウォーラーは、「耳に心地よく、おだやかで、そしてなめらかな」詩を書くとして、17世紀にとても高く評価されていた詩人です。

なお、ウォーラーは18歳から国会議員を務めた政治家でもありました。1640年代、内乱の時期に一度失脚し、国外に追放されています。(もともと家が裕福だったので、相当なわいろで処刑だけは免れて。) 1650年代初期、共和国期に赦されてイギリスに戻り、その後も1670年代までずっと政治に携わりました。ちなみに、クロムウェルと親戚同士だったりもします。(詳細はDNBを。第一版の古いものでしたら、で読めます。)

上記の通り、ウォーラーの詩は、心地よくなめらか、ということで17世紀後半にとても高く評価されて

いたわけですが、その具体的な要因のひとつとして、彼が、各詩行の音節数をそろえたことがあげられます。

この「行け、バラ」のような四拍子のストレス・ミーター、いわば「歌もの」の作品において、ウォーラー以前の詩人たちは、とにかく四拍子にのればいい、というかたちで書いてきました。

これに対してウォーラーのストレス・ミーターは、各行にビートは四つ、音節は八、と固定されています。(「行け、バラ」の場合、短い行はその半分です。)

各行のビート数のルールのみをもつ古英語以来のストレス・ミーターを、各行のビート数と音節数のルールをあわせもつシラブル・ストレス・ミーター(syllable-stress meter; accentual syllabic meter という表現のほうが一般的)の一タイプ、いわゆる四歩格(tetrameter)へと、ウォーラーが移行させたわけです。

(彼ひとりのしたことかどうかは、リサーチ不足のためまだなんともいえませんが。)

Ⅳ.参考文献

1.冨樫 剛 http://blog.goo.ne.jp/gtgsh/e/28d4cbbb0efed25cd8ac24151ee65a34
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以上

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